【日本発 アイデアの文化史】インスタントラーメン(上)(産経新聞)

 □庶民の目線 天ぷらがヒント

 ■登場から半世紀…世界で年間936億食

 お湯を入れて数分で食べられるラーメンやそばなど、いわゆる即席麺(めん)の消費量は、世界で年間936億食。世界中の人が年に約14回ずつ食べている計算になる。これは2008年のデータで、数は年々増えているそうだ。

 世界的にもメジャーな食品になりつつある即席麺を発明したのは日清食品の創業者、安藤百福(ももふく)。今年で生誕100年を迎えた故人の名前を知っている人も知らない人も、同社の製品を一度くらいは食べているはず。「出前一丁」「カップヌードル」「どん兵衛」「UFO」…と聞けばきっと。

 いまやコンビニやスーパーの棚で、けっこうな面積を占めている即席麺の起源をたどると、1958(昭和33)年に発売された「チキンラーメン」に行き着く。じつは登場から、まだ半世紀しかたっていない。

 大阪・梅田のターミナルから急行で20分。上方落語の演目「池田の猪(しし)買い」の舞台である大阪府池田市。即席麺の歴史は、この町ではじまった。昔はイノシシ猟をするような田舎だったのだろうが、いまは郊外のベッドタウン。駅から歩いて数分。住宅街の一角に、日清食品の「インスタントラーメン発明記念館」が立っている。

 展示室に、安藤が世紀の発明を行った自宅の小屋が、模型で再現されていた。本格的な研究所みたいなものを想像していたから、ちょっと驚き。それっぽい器具といえば、手動式の小さな製麺機ぐらい。そのほかは調理台から鍋釜、はかり…ありきたりの台所でしかない。案内してくれた担当者がにっこり笑う。

 「安藤は『発明に立派な道具はいらない』と言っていたそうです」

 天ぷらがヒントになったというから、アイデアも庶民的。試行錯誤を繰り返して、お湯をかけるだけで食べられる即席麺を生み出した。

                   ◇

 即席麺が、どれほど画期的だったかを考えるために、まず歴史を知る必要がある。私たちが「ラーメン」と言われて思い浮かべるのは、小麦粉を原料にしたそばをスープに入れた食品。日本で食べられ始めたのは明治時代からだという。いまのように専門店などはなく、中華料理店の一メニューとして「汁そば」「支那(中華)そば」などと呼ばれていた。

 かつて安藤とともに国内外をめぐり、麺食文化を調査した伝承料理研究家の奥村彪夫(あやお)(72)は、こう言い切る。

 「そもそもラーメンは日本語です」

 ほんとですか?拉麺なんて漢字表記もあるし、てっきり中国伝来かと。

 「拉麺という中国語は、手延べ麺という程度の意味。ラーメンは札幌の中華料理屋が大正時代に使い始めた地域限定の言葉でした。戦後になって、全国的にラーメンという呼ばれ方が定着しますが、チキンラーメンの発売は、その大きなきっかけになった」

 スーパーマーケットの台頭、テレビの普及と時を同じくして登場した「チキンラーメン」はあっという間に、爆発的なヒット商品になる。後発メーカーも相次いだ。

 「チキンラーメンが出て、屋号がみんなラーメン屋に変わりましたね」

                   ◇

 安藤が発明したのは、簡単にいえば「瞬間油熱乾燥法」ということになる。

 蒸した麺に味付けをして、熱した油に沈めて揚げる。すると、水分が蒸発して麺には細かな気泡ができる。お湯をかけると、気泡に水分がしみこんで、ゆで麺にもどる。聞けば簡単。だけど、思いつくのは偉い。そしてもっと偉かったのは、アイデアを独占しなかったこと。安藤は「競争するほど、いい商品ができる」と語った。多くの会社が製法の使用許諾を得て、即席麺を製造した。

 奥村はいう。

 「安藤さんとはずいぶん長くつきあいましたけれど、もうけるためにというのではなくて、社会に貢献したいという思いの強い人でしたね」

 安藤が発明したのは、別の言い方をするなら「手間暇の節約法」でもある。即席麺のヒットは、高度経済成長とピタリと重なる。家事や労働についての人々の意識は大きく変化した。手軽で保存のきく加工食品は、社会のニーズに合っていた。インスタントコーヒーが国産化されたのもこのころ。簡便なインスタント食品は、一気に家庭に広まった。=敬称略(篠原知存)

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